与信管理

中国企業の信用調査報告書にもとづく、自社格付け

中国企業の与信管理/信用調査

前回記事(中国企業の評価(格付け)・具体的な分析コメントでは、「中国アドバンスレポート」に記載される、ローカルスコアの分析コメントについて紹介しました。

今回は、ローカルスコアに包含されていながら、分析コメントには言及されない、いわゆる行間の読み解き方を紹介します。

何回かに分けて説明しますが、これらのポイントが抑えられると、自社格付けの付与にも役立ちますので、ぜひお付き合いください。

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Chapter 1

最重要項目?中国企業の決算書

さて信用調査会社の評価は信じないというユーザーの多くは、社内格付けを付与している事をその根拠として挙げる場合が多くあります。

「では、その格付けはどのように算出されているのでしょうか。」と尋ねると、財務分析にもとづき、とくにその中でも自己資本比率に重点を置いて、決定しているという回答が非常に多いです。

中国企業について分析を進める際にも、決算書の重要性は疑いどころがありません。

ただ、あえて決算書は参考程度にとどめるべき情報と記させていただきます。

Chapter 1

中国企業の決算書を参考程度に留めるべき理由1。取得率と信憑性

「勝手なこと言って」とみなさんのお叱りを受けそうですが、理由は大きく二つあります。一つは、決算書の取得率と信憑性です。従前より、中国企業の情報開示は日本よりも充実しており、上場、未上場の別を問わず、決算書についても容易にアクセスができる状況でした。かつては工商局、税務局、統計局という決算書データの三大ソースがあり、いずれの信用調査会社もそのいずれかのデータを信用調査報告書に掲載してきた背景があります。

しかし最近においては、工商局から取得できていた詳細項目の決算書は、日本の官報公告に見られる貸借対照表のように、大項目のみの要約版になってしまいました。また、税務局、統計局からの情報にはほぼアクセスができない状況となり、未上場の中国企業の決算書を取得する事は、概要データ以外難しくなっています。

また、三大ソースからの情報が容易に取得できていた当時から、各ソースの決算書に数値の違いがある事が良く指摘されていました。工商局のデータで黒字でも、税務局の決算書は赤字になっている。統計局のデータは貸借の左右がバランスしていないなど、どれが本当の数字なのかを掴むことは、とても難しいと言えます。(クレディセイフのデータについては、営業担当にお問合せください)

Chapter 1

中国企業の決算書を参考程度に留めるべき理由2。財務収録の時差について

そこに二つ目の理由を被せますが、決算書が持つ点の情報としての性質です。

中国企業の決算期は12月が圧倒的多数です。

これらの数字が掌握できるのは、6か月後から7か月後になります。

決算が締まってからそれだけの時間が経過すれば、期末で赤字であった会社がV字回復しているかも知れませんし、逆に黒字であった会社が、COVID-19の影響を被り苦戦しているという状況が有り得るかも知れません。

 

それら二つの理由からも、中国企業の決算書そのものは、社内格付けあるいは与信判断の際の参考情報になり得ても、絶対譲歩するべきではないことがおわかりいただけると思います。

 

それでも決算書を重視するというユーザーも、いらっしゃると思います。

たしかに余程ユニークな会計基準が採用されていない限り、財務分析の手法や指標は、国を横断する形で使えるので、属人的な判断になりにくいというメリットはあると思います。

 

他方、銀行や投資家のような安定性を重視する、すなわち自己資本比率によって対象企業の良し悪しを判断するという方法には、最近疑問符が多く付けられるようになり、商流の中から自社に支払を行ってくれるのかどうかを見る為にも、手元流動性をより重視すべきだという議論があります。

これも非常に興味深いトピックなので、別のブログを設けて説明できればと思います。

 

話が脱線しましたが、今回は中国企業の決算書について少し紹介いたしました。

次回は、「そんな無責任なこといって、じゃあ何で判断すればいいんだ?」という疑問にお答えできるよう、レポートに含まれる重要項目のいくつかを取り上げたいと思います。

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中村裕幸

(株)クレディセイフ企業情報 CSO 学卒後、株式会社帝国データバンク入社。海外関連部署に配属の後、東京支社調査一部に配属。日本国内企業の信用調査業務に従事する。 2010年にエクスペリアンジャパン株式会社に転じ、取締役として海外企業信用調査、コンプライアンス事業の拡大に寄与。 与信管理業界に革新を起こすクレディセイフにて、2019年より戦略担当を担う。

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