理論的な知識を実務に落とし込むには、体系的なリスク管理プロセスが必要です。
与信管理の基本は、取引の可否と取引可能な金額を決めることです。新規取引と既存取引では与信管理の局面が異なり、それぞれに適したアプローチが求められます。不良債権を抑制するためには、取引可否と金額を決めるサイクルを定着させることが不可欠です。
与信管理規定の策定と運用
与信管理規定は、企業ごとに作成され、営業方針や業界の取引慣習を反映しています。
規定には、与信判断の基準、決裁権限、審査プロセス、モニタリング方法などが明記されます。複数の企業レポートを活用した社内評価マトリックスを作成し、調査点数に応じた稟議基準を策定することで、客観的かつ効率的な与信判断が可能になります。たとえば、調査点数が高い企業には営業部長決済で迅速に対応し、リスクの高い企業には管理部長審議や社長決裁を要するなど、リスクレベルに応じた階層的な意思決定プロセスを構築します。
営業担当者による経営悪化の早期発見
営業担当者は、取引先との距離が近いため、経営悪化の兆候をいち早く察知できる立場にあります。
経営面では、経営者の交代や主要取引先の変更、営業面では受注量の急減や値引き要請の増加、取引実績では発注頻度の低下や小口化、支払実績では支払遅延や手形サイトの延長など、様々な兆候があります。生産在庫面では在庫の急増や品質低下、金融面では銀行取引の変化や担保設定の増加、従業員面では離職率の上昇や士気の低下などが警戒信号となります。
営業担当者向けの与信管理チェックシートを活用し、これらの項目を定期的に確認することで、客観的な判断が難しい場合でも、第三者の視点を取り入れた総合的な評価が可能になります。信用調査会社の定期レポートと営業担当者の観察を組み合わせることで、与信管理の精度が大幅に向上します。
倒産発覚時の迅速な対応手順
取引先の倒産情報をつかんだら、債権者として次の行動を迅速に取る必要があります。
まず、倒産の種類を確認します。法的整理か私的整理かによって対応が異なるため、債務者に説明を求め、信用調査会社に調査を依頼して事実関係を把握します。次に、債権残高と契約残を確認し、契約残がある場合は出荷を停止します。債務者との契約内容によっては一方的に契約を解除できない場合もあるため、契約条項を精査して今後の対応を検討します。
法的整理であれば、裁判所や管財人から正式な破産通知が届くのが一般的です。債権登録を行い、倒産手続の進捗状況をモニタリングすることで、可能な限りの債権回収を図ります。私的整理の場合は、債権者会議への参加や個別交渉など、柔軟な対応が求められます。