与信限度額の算出方法を徹底解説

計算式と実務での活用ポイント

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与信限度額とは何か?その重要性を理解する

取引先との商売を拡大したい。

そんな思いを抱く経営者や営業担当者にとって、与信限度額の設定は避けて通れない課題です。与信限度額とは、取引先ごとに設定された売掛債権などの上限額のことで、企業が過度の与信リスクを負わないようにするために重要です。信用度が高い取引先には高めの限度額を、そうでない取引先には低めの限度額を設定するのが一般的な考え方となります。

企業間取引の多くは「請求書払い」で行われます。商品やサービスを提供した後、1カ月分などの代金をまとめて後日発行された請求書にもとづいて期日までに支払われる仕組みです。この「後払い」の取引において、どの程度の金額まで掛け売りを認めてよいのかを明確にするため、与信限度額が設定されるのです。

与信限度額の設定は法的な義務ではありません。しかし、設定しない場合は代金未回収や計画倒産のリスクが生じます。自社の経営を守るためにも、適切な与信限度額の設定と管理が不可欠なのです。

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与信限度額の計算方法:基本的な算出式を押さえる

与信限度額を決める際の基本原則は「必要かつ安全な範囲内」です。

まず「必要な範囲」とは、月間販売見込み額を算定し、それに回収サイトを掛けることで平均の売掛債権残高を算出して計算します。回収サイトは、受取手形のサイトだけではなく、手形を回収するまでの売掛期間を考慮に入れる必要があります。

基本的な計算式

(月間売上見込み額 × 売掛期間月数)+(月間売上見込み額 × 手形期間月数)


具体例

「月末締め翌月末振出、振出日起算90日後手形」の場合

  • 売掛期間:2か月
  • 手形期間:3か月
  • 回収サイト合計:5か月

月間売上見込み額が500万円であれば、
500万円 × 5か月 = 2,500万円

実務では多少の変動を考慮し、2,500万〜3,000万円程度を与信限度額として設定します。

安全な範囲の考え方

次に「安全な範囲」ですが、これは自社の財務内容や取引先に対するシェアに基づいて設定されるものとなります。自社の体力を超えて取引を行うと非常に危険ですし、販売シェアを取りすぎると撤退しにくくなります。したがって、与信管理ルールで、販売先の格付ごとに与信限度や売込シェアの目安を決めておくのが一般的です。

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格付けに応じた与信限度額の設定基準

取引先の信用度を評価し、格付けを行うことは与信管理の基本です。

格付けごとに与信限度の上限や売込限度額の目安を設定することで、リスクを適切にコントロールできます。一般的な格付け別の与信限度額設定例を見てみましょう。

格付けと倒産確率の関係

格付けAの企業は倒産確率が0.05%と極めて低く、与信限度の上限は5,000万円、売込限度額は取引先の仕入債務の30%程度が目安となります。格付けBでは倒産確率0.25%、与信限度の上限2,000万円、売込限度額は取引先の仕入債務の20%です。格付けが下がるにつれて、倒産確率は上昇し、与信限度額は減少していきます。

格付けCは倒産確率0.90%で与信限度の上限1,000万円、格付けDは倒産確率1.50%で与信限度の上限500万円、格付けEは倒産確率2.50%で与信限度の上限200万円となります。もっとも低い格付けFでは倒産確率6.00%となり、与信限度の上限はわずか10万円、売込限度額は取引先の仕入債務の0%と、実質的に取引を控えるべき水準です。

実際の取引に即した設定の重要性

ここで注意すべきことがあります。いくら会社が定める安全な範囲に入っているからといって、実際の取引に即していない与信限度を設定しないことです。販売先に対する売上が通常の2倍、3倍となっても与信限度を超過せず、変調に気付くことができない可能性があります。

売上が増加している原因は、他の取引先が撤退を開始しているからということもあり、危険な状態となっている債権をみすみすさらに増加させてしまうこともありえます。必要な与信限度を意識して設定するようにしましょう。

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実務で活用できる与信限度額の設定基準

理論だけでなく、実務で使える設定基準を知りたい。

そんな声に応えるため、ここでは複数の設定基準をご紹介します。自社の状況や取引先の特性に応じて、最適な方法を選択することが重要です。

自社の純資産を基準にする方法

自社の財務体力を考慮した設定方法です。自社の純資産額を基準として、その一定割合を与信限度額の総枠とする考え方です。この方法は、自社の財務状況を超えた過度なリスクテイクを防ぐ効果があります。

取引先の純資産を基準にする方法

取引先の財務諸表から純資産額を確認し、その一定割合を与信限度額とする方法です。取引先の財務的な安定性を直接反映できる利点があります。ただし、非上場企業の場合は財務情報の入手が困難なケースもあるため、信用調査会社のサービスを活用することが有効です。

取引先の仕入債務を基準にする方法

取引先の仕入債務総額に対する自社のシェアを考慮する方法です。格付けに応じて、取引先の仕入債務の一定割合以内に抑えることで、特定の仕入先への依存度が高まりすぎるリスクを回避できます。

取引先の月間売上高の1割を基準にする方法

取引先の月間売上高の10%程度を目安とする簡便な方法です。この方法は計算が簡単で、取引先の事業規模に応じた適切な与信限度額を設定できる利点があります。

取引先と同業企業を比較する方法

同業他社の財務指標や信用情報と比較することで、取引先の相対的な信用力を評価する方法です。業界特有のリスク要因を考慮できる点が特徴です。

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与信限度額設定時の重要ポイント

与信限度額を設定する際、いくつかの重要なポイントがあります。

これらのポイントを押さえることで、より効果的な与信管理が実現できます。実務での失敗を防ぎ、リスクを最小化するための具体的な施策を見ていきましょう。

与信管理の専門部署を作る

与信管理を効果的に行うには、専門部署の設置が理想的です。営業部門と管理部門の調整弁として機能し、収益機会と与信リスクのバランスを見て設定できます。たとえば、管理部門として取引不可の取引先でも、営業政策上どうしても取引を行わなければならないときには与信限度を絞って取引を行うことで調整を行うなどが可能となります。

徹底した情報収集を行う

取引先の経営状態や評判を知るため、財務諸表の確認はもちろん、数値に表れない情報の調査も必要です。上場企業の場合は企業情報が詳細に公開されていますが、非上場企業は限られた情報しか公開されていないことが多いです。業界での優位性、経営者の影響力やビジネス能力、性格・資質、同業者からの評判など、信用力を判断する目安となる情報を細かく集めましょう。

与信限度額の統一基準を定める

審査は評価する担当者によって結果が変わらないよう、一定の基準を設定しておくとよいでしょう。格付け制度を整備し、各格付けに対応した与信限度額の基準を明確にすることで、公平で一貫性のある与信管理が可能になります。

与信限度額の有効期限を設定する

取引先の経営状況は常に変化します。一度設定した与信限度額をそのまま放置せず、定期的な見直しが必要です。有効期限を設定し、期限ごとに取引先の最新情報を収集して再評価することで、リスクの早期発見につながります。

与信限度額がオーバーした場合の対応

与信限度額を超過してしまった場合、どう対応すべきか?

この問いに対する答えは、取引先の状況によって大きく異なります。適切な判断と迅速な対応が、リスクを最小化する鍵となります。

業績や社内の状況に問題がない場合

取引先の業績が好調で、社内の状況にも問題がない場合は、与信限度額の見直しを検討します。必要な与信限度を考えると安全な与信限度を超えてしまう場合がありえます。この場合は、担保等を取得する、販売先の動向を何時でも把握できる状態にしておく、などの対策を取ったうえで、1ランク上位の決裁者が取引可否を決定するようなルールを作っておくとよいでしょう。

業績や社内の状況に問題がある場合

一方、取引先の業績が悪化している、または社内の状況に問題がある兆候が見られる場合は、慎重な対応が求められます。新規の取引を一時停止する、既存の債権の早期回収を図る、担保や保証の追加を要求するなど、リスク軽減策を速やかに実施する必要があります。

特に注意すべきは、売上が急増している場合です。一見好調に見えても、他の取引先が撤退を開始しているために自社への発注が集中している可能性があります。このような状況では、取引先の財務状況が急速に悪化するリスクが高まっているため、より慎重な与信管理が必要です。

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クレディセイフで与信管理を効率化

クレディセイフは、取引先の与信限度額が簡単にチェックできる企業信用レポートをワンストップで提供。3,400社を超える導入実績に基づき、与信管理で企業間取引をサポート。

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まとめ

与信限度額の算出方法と実務での活用ポイントを見てきました。

与信限度額は「必要かつ安全な範囲内」という原則に基づき、月間売上見込み額と回収サイトから計算される必要額と、自社の財務体力や取引先の格付けに基づく安全額のバランスを取って設定します。格付けに応じた明確な基準を設け、定期的な見直しを行うことで、リスクを最小化しながら収益機会を最大化できます。

与信限度額がオーバーした場合は、取引先の状況を慎重に見極め、適切な対応を取ることが重要です。業績が好調であれば限度額の見直しを、問題がある場合はリスク軽減策を速やかに実施しましょう。

正確な与信管理には、信頼できる企業情報が不可欠です。クレディセイフのような専門サービスを活用することで、最新かつ正確な情報に基づいた与信判断が可能になります。適切な与信限度額の設定と管理により、安全で持続可能な取引関係を構築していきましょう。