サプライチェーン全体を可視化する視点

海外ビジネスの現場では、日々新たなリスクが顕在化しています。
市場拡大のチャンスを取り込みつつ、信用リスクをいかに制御するか――。
与信管理部門は今や、単なる審査機能を超え、企業全体のリスク戦略を担う存在となっています。

本メールマガジンでは、
企業の与信管理を支える実務者の皆さまに向け、最新の視点や事例をお届けします。
現場の判断に役立つインサイトを、毎号テーマごとに深掘りしてまいります。

グローバルサプライチェーンと与信リスク

世界経済の複雑化とともに、サプライチェーンはますます多国籍化しています。自動車、エレクトロニクス、化学品など、主要産業の調達網は国境を越えて広がり、一つの部材調達が数か国にまたがることも珍しくありません。その一方で、こうした多層的な供給網は新たな与信リスクを内包しています。本稿では、グローバルサプライチェーンが与信管理に与える影響を考えます。

 

1. 直接取引先だけでは不十分

従来の与信管理は、一次取引先の財務状態や支払履歴に焦点を当てるものでした。

しかし、グローバル化が進む現在では、一次取引先が依存する二次・三次のサプライヤーの健全性が重要になっています。

ある企業が健全であっても、その背後の調達先が倒産や供給停止に陥れば、間接的に一次取引先の債務履行能力に影響を及ぼします。

 

2. サプライチェーン途絶リスク

新型コロナウイルスのパンデミックや自然災害は、供給網の脆弱性を浮き彫りにしました。

たとえば、東南アジアの一工場の操業停止が、欧州や日本の大企業にまで影響を及ぼした事例は記憶に新しいところです。

サプライチェーン途絶はキャッシュフロー悪化や信用不安を引き起こし、与信リスクとして顕在化します。

 

3. 見えにくいリスクの把握

多層的な供給網では、取引先企業が「どの国から部材を調達しているか」「サプライヤーの財務体質はどうか」といった情報が不透明になりがちです。

その結果、財務諸表の分析だけでは把握できない「見えにくいリスク」が存在します。これに対応するためには、企業ネットワーク全体を可視化する取り組みが欠かせません。

 

4. 実務への示唆

  • サプライチェーンマッピング:一次取引先だけでなく、背後の供給網を把握する仕組みづくり。
  • 集中リスクの特定:特定地域・企業に依存しすぎていないかを定量的に評価。
  • 危機対応力の評価:取引先が代替調達ルートや在庫戦略を持っているかを確認。

 

5. おわりに

サプライチェーンの健全性は、そのまま与信リスクに直結します。

取引先一社の与信判断にとどまらず、サプライチェーン全体を俯瞰した管理体制が今後のスタンダードになるでしょう。

当社では、多国籍ネットワークを可視化する全世界4億3,000万件の企業情報データベースを提供し、リスク管理を支援しています。

 

まとめ

  • サプライチェーン途絶は一次取引先の信用不安につながる
  • 二次・三次サプライヤーの健全性まで含めたリスク管理が必要
  • 集中リスクや代替ルートの有無を定量的に評価すべき

 

次号より、CAMS(Certified Anti‐Money Laundering Specialist/認定アンチマネーロンダリング スペシャリスト)保有者による「コンプライアンス」をテーマにした記事をお届けします。

 

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