中国企業調査報告書にもとづく、自社格付け(番外編)
与信管理

中国企業の信用調査報告書にもとづく、自社格付け(番外編)

中国企業の与信管理/信用調査

前回記事として、株主情報の解釈について述べました。実はここに潜在的なリスクがあり、各社「コンプライアンス」という題目で、それらの情報に着眼しています。

一方、タイトルにある格付けや、与信管理という視点でみた場合、この「コンプライアンス」までリスクコントロールの範囲を広げないという考え方もあります。

ゆえに今回は、「その4」ではなく、「番外編」として書きますので、リラックスしながらお付き合い頂ければと思います。

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Chapter 1

株主情報に潜む潜在リスクとは?

筆者が与信管理担当者に、企業信用データを提供し始めたのは、20年ほど前からです。

当初は、伝統的な取引相手が倒産する事により、売掛金が回収できなくなるのを避けるという目的で、海外企業信用調査報告書も活用されてきました。

ここに、主に海外政府が取引してはいけない会社というのを指定しはじめ、それらの制裁・規制に対応する為に「コンプライアンス」延いては「コンプライアンスチェック」という概念が、信用調査の中に含まれてきました。

これが5年ほど前からの流れになります。

 

上にあげた取引してはいけない対象は、日本国内も含めると大きく3つに分類され、一つは大量破壊兵器等の武器の製造に係わる組織(個人)、もう一つは資金の不正移転や公平な競争を棄損する恐れがあるテロリスト、政府出資企業、政府要人など、最後に反社会的勢力となります。

 

前置きが長くなりましたが、いずれも黒と識別される対象のみではなく、それに関連する組織や個人にまで取引関係の回避を求めている点が課題で、わかりやすく言うならば、暴力団との取引を避ける為に、構成員との関係だけではなくフロント企業かどうかを確認するという点と似ています。

そうした関係者として注意を向ける対象となるのが株主であり、さらに階層を登るとその株主から利益を得る株主(究極受益者・UBO)はだれなのか、という問題にたどり着くわけです。

Chapter 1

コンプライアンスリスクへの対応

ここまで述べてきたような背景から、信用調査報告書を取得し、当該企業の事業継続性を判断するのはすでに必要最低限といえ、実はその株主、さらに究極受益者まで確認する必要がある(あるいは、確認する事が望ましい)という状況です。

「中国アドバンスレポート」にUBOが報告される点は以前のブログで紹介の通りですが、では何をもって確認したといえるのでしょうか。

 

各国政府や国際機関は、さまざまな準拠法に基づき取引すべきではない企業のリストを作成しています。

中国当局が、米国のそれに対する対抗措置として、中国当局のメリットにならない事をする法人などをリスト化するという情報は、新聞紙面を騒がせているとおりです。

 

ゆえに究極的には取引対象企業やその親会社、UBOが、それらリストに抵触していない事を確認するという業務になります。

 

しかし、そうしたリストは数千種類にも及び、日次で数百件が更新または新規に追加されている状況です。

ゆえに、100人の従業員をアサインして日次で目検するのであれば可能かも知れませんが、多くの日本企業にとってそれらを手作業で確認するのは、物理的に不可能です。(そんなコストを掛けるんだったら、というのは主観的なので割愛します)

そこでクレディセイフ企業情報のような情報サービスプロバイダーが、一つのポータルですべてのリストを複合横断的にスクリーニングできるサービスを提供している訳です。(このブログは販促ではないので、詳細は営業担当までお問合せください。)

Chapter 1

鵜呑みにできない情報ソース

しかしながら中国企業については、報告される株主情報およびUBO、つまりコンプライアンスチェックの前提条件を鵜呑みにする事ができないという特殊な事情があります。

「中国アドバンスレポート」を含め、多くの中国企業信用調査報告書の情報の出所は、中国当局です。

資本金および株主情報が登記事項である事は説明済みですが、法的公示力があるその登記資料に基づき、信用調査報告書も作成されています。

であれば正しい情報だというのが、日本を含めた国々での解釈になりますが、これが当てはまりません。

 

例は枚挙にいとまがありませんが、弊社のお客様にA社の「中国アドバンスレポート」を取得いただきました。

この親会社はB、UBOは個人Cであったとします。Bは中国でも名の知れた大会社で、重工業に従事する会社でした。

Cは佐藤や鈴木のようによくある苗字の人物で、その情報だけでは背景までを掌握する事はできませんでした。

 

コンプライアンスのリスクを懸念されたお客様は、クレディセイフに対してコンプライアンスチェックを依頼。

結果、Aの株主であるBは〇〇集団有限公司で、Cは中国政府という報告になりました。またそのBは、軍需産業への従事が確認されており、日本国および米国の制裁規制対象企業になっている事も判明しました。

 

ここで言えるのは、中国から取得できる中国の法律にもとづく情報と、国際社会からみたその会社(または個人)の認識が異なる場合があるという事です。

当然、後者の認識を掌握したお客様は、中国企業Aとの取引は回避せざるを得なかったと思います。

 

しかし、逆に国際社会からの認識を知らずに取引をしたとしても、中国から入手し得る範囲の情報では、それが軍需関連であるという事は見抜くすべがなかった訳であり、将来的にコンプライアンス違反による制裁の対象になったとしても、釈明の余地があるように思われます。

 

手元資料ではこうした事例にもとづく被制裁の判例がなく、「必ず株主やUBOのコンプライアンスチェックをすべきだ」とは言えません。

しかしながら、制裁規制対象であると知り得る術に蓋をして取引を開始(継続)したときに、自社の存続をすら危うくするような大きなリスクが潜在するということは、いえるように思われます。

 

 

以上のようなところで番外編は終わりとして、次回は訴訟関連の情報について、少し説明したいと思います。

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著者: 中村裕幸 (株)クレディセイフ企業情報 CSO

学卒後、株式会社帝国データバンク入社。海外関連部署に配属の後、東京支社調査一部に配属。日本国内企業の信用調査業務に従事する。 2010年にエクスペリアンジャパン株式会社に転じ、取締役として海外企業信用調査、コンプライアンス事業の拡大に寄与。 与信管理業界に革新を起こすクレディセイフにて、2019年より戦略担当を担う。

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