規制コンプライアンスの中核:AML<後編>

-ついに「実効性」が問われ始めたDNFBPs―

不動産で具体化するAML対策と、日本の行政・法執行機関の変化について、私たちが備えるべきこと

ビジネスの現場で語られるコンプライアンスの中でも、社会の治安や金融システムの信頼性にもっとも直結する領域の一つが、AML(Anti-Money Laundering:マネー・ローンダリング対策)です。2026年9月初頭に国土交通省と警察庁が公表した資料からも、AMLをめぐる明確な変化が読み取れます。

昨今、AML対策では「実効性」が重要なキーワードとなっています。その中で、今回の規制をめぐる動きは重要なシグナルといえるでしょう。今回は、不動産業をはじめとするDNFBPsと呼ばれる業種に焦点を当て、決して他人事ではないAMLの現状について共有します。

前回までの記事はこちら

規制コンプライアンスの中核:AML<前編>-AMLとは何か?https://www.creditsafe.com/jp/ja/blog/email-newsletter/aml-overview.html

規制コンプライアンスの中核:AML<中編>-AMLの現状と、その鍵を握るDNFBPsとは?
https://www.creditsafe.com/jp/ja/blog/email-newsletter/aml-overview2.html


前回の記事では、AMLについて、金融機関だけではなく、DNFBPs(ディーエヌエフビーピーズ/Designated Non-Financial Businesses and Professions/指定非金融業者・職業専門家)にも目を向ける必要があることを紹介しました。今回は、こうした業態に関わる経営者の方にはぜひお目通しいただきたい内容です。また、その他の業態においても、規制コンプライアンス、与信管理、審査などに携わる実務担当者の方に参考にしていただける内容となっています。

DNFBPsとは、犯罪収益移転防止法の対象となる「特定事業者」のうち、銀行や貸金業者、資金移動業者などの金融機関等を除いた事業者・専門家です。日本では、宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者、郵便物受取サービス業者、電話受付代行・電話転送サービス事業者、弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士などが含まれます。

 

はじめに

前回の記事でとくに取り上げたのが、警察庁の「犯罪収益移転防止に関する年次報告書(令和7年)」です。警察庁は、DNFBPsを冒頭で「特集1」として取り上げました。令和7年中に国家公安委員会・警察庁へ通知された「疑わしい取引の届出(STR:Suspicious Transaction Report)」は101万9,405件。そのうちDNFBPsからの通知は439件、全体の約0.04%でした。前回の記事でお伝えしたのは、ここまででした。

では、なぜDNFBPsは金融機関とは別の枠で考える必要があるのでしょうか。そして、日本の行政・法執行機関は実際にどのような動きを見せ、事業者側は一体どうすればいいのか。今回は、その続きを考えてみたいと思います。

 

1.そもそも、なぜDNFBPsという別枠が必要なのか?

マネー・ローンダリングと聞くと、多くの方は銀行口座を使った資金移動を思い浮かべるかもしれません。犯罪で得た資金を別の口座へ送る。海外へ送金する。複数の名義や法人を経由させる。もちろん、金融機関はAMLにおける重要な防波堤です。しかし、犯罪者にとっての最終目的は、必ずしも「銀行口座の中でお金を動かすこと」ではありません。

  • 犯罪で得た資金を、不動産に換える。
  • 宝石や貴金属に換える。
  • 法人を設立し、その法人の資産として保有する。
  • 専門家を介在させ、財産の所有や管理の形を変える。

 

つまり犯罪収益は、現金や預金という形から、別の「富」の形へと移転・変換されていきます。ここに、DNFBPsが重要になる理由があります。警察庁も、不動産や宝石・貴金属などへ犯罪収益が移転すると、その後の追跡が一層難しくなると指摘しています。実際に、金融機関からの疑わしい取引情報によって不動産会社や宝石・貴金属事業者への資金移転までは把握できたものの、その先のDNFBPsから届出がなかったため、以降の追跡が困難になった事例があったとしています。

これは非常に分かりやすい話です。銀行から不動産会社へ1億円が送金されたところまでは分かる。しかし、その1億円がどの不動産に変わり、その後誰が所有しているのかが分からなければ、資金の追跡はそこで途切れてしまいます。法律・会計サービスについても同様です。警察庁は、犯罪収益の隠匿行為を正当な取引に見せるため、法律・会計専門家を取引や財産管理に介在させた事例を紹介しています。

つまり、DNFBPsは単に「銀行以外にもAMLをやってもらう」ために存在しているのではありません。金融機関とは違う場所で、犯罪収益が資産化され、移転され、正当な経済活動の中へ入り込む瞬間を見ることができるからです。

FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)の国際基準でも、不動産業者、貴金属・宝石取扱事業者、法律・会計専門家、トラスト・会社設立サービス事業者などはDNFBPsとして位置付けられています。金融機関から見えるものと、DNFBPsから見えるものは違う。だから、両輪としての対策が必要なのです。

財務省によるコラムの言葉をお借りすると「金融機関に並『もう一つの門番』としての機能を、監督当局や事業者自身がどれほど意識できているか。」に尽きると言えます。

 

2.「ルールがあるか?」から「実際に機能しているか?」へ

ここで、最近の日本の動きを並べてみると、興味深い変化が見えてきます。先ほど紹介した警察庁の令和7年年次報告書では、DNFBPsが冒頭の特集として取り上げられました。

さらに、2028年に控えるFATF第5次対日相互審査では、これまで一つの枠で審査されてきた金融機関等とDNFBPsが、別の枠で審査されると警察庁は説明しています。そして2026年9月3日、今度は国土交通省から宅地建物取引業者をまとめる各業界団体に向けて、「疑わしい取引の届出」に関する新たな事務連絡が出されました。

【国土交通省】事務連絡(「判断基準の明確化」の解釈にいて)

今回の事務連絡で筆者が注目したのは、単にチェックリストを改訂するという話ではない点です。本腰を入れて規制を強化する、つまり「実効性」を意識した改訂であることです。

国土交通省は、「疑わしい取引の届出」を行った上で契約を締結しても問題ないことや、自社判断で契約に至らなかった案件であっても、疑わしいと判断すれば届出が必要であることを改めて明確にしました。さらに、チェックリストに一つでも該当する場合、また該当するか明確でなく判断に迷う場合も届出を行うという考え方を示しています。しかも、この解釈については、警察庁の犯罪収益対策室とも認識を共有していることが事務連絡に明記されています。

つまり、一連の動きを見ると、DNFBPsに対するAMLは「ルールを設けていますか?」という段階から、「そのルールによって、実際に疑わしい取引を見つけ、届け出ることができていますか?」という、「実効性」を問う段階へ重心が移りつつあるように見えます。

 

3.不動産で具体化し始めた「何を確認することから始まるのか?」

今回、国土交通省が示した「不動産の売買における疑わしい取引の参考事例(案)」には、44の事例が並んでいます。顧客の収入や資産、法人の事業規模に見合わない高額取引、金融機関を介さない取引、暗号資産を用いた取引、法人に実体がない疑い、設立されて間もない企業や休眠会社による不自然な取引、契約者とは別の人物からの支払いなど、非常に具体的です。

こうした項目を見ると、これまで以上に重要になるのが、「相手が誰か?」だけではなく、「その相手にとって、この取引は自然なのか?」という視点です。たとえば、設立から半年の会社が数億円の不動産を購入したからといって、それだけで疑わしい会社と決めることはできません。不動産投資を目的として設立された会社で、十分な資金的裏付けがあるのであれば合理性はあるでしょう。

反対に、小規模な事業会社が本業とは関係のない高級マンションを突然購入し、その資金源について合理的な説明が得られないのであれば、確認すべきことは増えます。つまり、疑わしい取引を見つけるためには、まずその企業の「通常の姿」を知らなければならないのです。

 

4.とくに目を引く「外国との取引」の具体化

外国との取引について今回の参考事例(案)で、とくに注目したいのが外国関連の項目です。資料では、新規追加・追記箇所が赤字で示されています。その中で新たに「外国との取引に着目した事例」という区分が置かれ、26番では「資金洗浄・テロ資金供与対策に非協力的な国・地域又は不正薬物の仕出国・地域に拠点を置く契約者に係る取引」、27番では、「資金洗浄・テロ資金供与対策に非協力的な国・地域又は不正薬物の仕出国・地域に拠点を置く者(法人を含む。)と関連する可能性がある契約者に係る取引」まで対象にしています。

この27番は、実務上かなり重要と考えられます。契約者自身が海外企業である必要はありません。たとえば契約者は日本法人で、所在地も東京だったとします。しかし、その会社を所有する企業が海外にあるかもしれません。役員や株主が海外企業と関係しているかもしれません。最終的に会社を支配している人物が海外にいるかもしれません。

この最終的に会社を所有・支配している人物を、「UBO(Ultimate Beneficial Owner:実質的支配者)」と呼びます。目の前の日本法人だけを確認して、「国内企業だから問題なし」としてしまえば、その先の関係は見えなくなってしまいます。今回の改正案はその点を突いています。さらに今回の案では、国内の非営利団体が、不自然な形で海外の関連団体口座へ不動産売却代金を送るよう指示するケースも例示されています。

 

外国PEPsとの取引について

また、外国PEPsについても、項目が具体化されています。「PEPs(Politically Exposed Persons:重要な公的地位にある者)」とは、政府高官など、公的に重要な地位にある、またはあった人物を指します。PEPであること自体が不正を意味するものではありませんが、その立場から贈収賄や腐敗などのリスクを考慮し、通常より慎重な確認が求められることがあります。

今回、新設されているのが次の項目です。

40. 取引を行う目的等について合理的な理由があると認められない外国 PEPsとの取引
(たとえば、複数物件を購入するが使用予定なし、居住用として購入するが滞在予定なし 等)

41. 財産や取引の原資について合理的な理由があると認められない外国 PEPsとの取引
(たとえば、顧客の属性(年齢、家族構成等)、収入、資産、過去の取引額 等に見合わない高額な物件の購入 等)

42. 腐敗度が高いとされている国・地域の外国 PEPs との取引

43. 国連腐敗防止条約や OECD 外国公務員贈賄防止条約等の腐敗防止に係る国際条約に署名・批准していない国・地域又は腐敗防止に係る国際条約に基づく活動に非協力的な国・地域に拠点を置く外国 PEPs との取引などの項目が新設されています。

今回の案では、外国PEPsについて単純に「PEPか、PEPではないか」を見るのではありません。取引目的に合理性があるか。資産や取引原資に合理性があるか。その人物に関係する国・地域の腐敗リスクはどうか。国際的な腐敗防止の枠組みに協力している国・地域なのか。こうした複数の角度から見る事例が追加されています。

つまり、「外国PEPsの検知はもはやできて当然。その先まで確認できているかを当局が見ている」というシグナルだと筆者は読んでいます。ここまで具体化されたことからは、形式的なチェックで生まれやすい「抜け」を減らし、疑わしい取引の届出を実際に機能させようとする姿勢がうかがえます。

 

5.「国内外の犯罪組織」は新しくない。問題は、私たちが本当に見つけられるか

ここで一つ、注意しておきたい点があります。今回の参考事例(案)の35番には、暴力団関係者だけでなく、国内外の犯罪組織への関与が疑われる者との取引が挙げられています。しかし、この35番自体は今回新しく追加された項目ではありません。

海外の犯罪組織をリスクとして見る考え方は、以前から存在しています。だからこそ、筆者はむしろ別の点を問題だと考えています。私たちが従来「反社チェック」と呼んできた仕組みは、本当に「国内外」という範囲まで網羅できていたのでしょうか?

国内の暴力団情報を確認することは、もちろん重要です。しかし海外の犯罪組織まで視野を広げると、単に「犯罪組織をもう一つブラックリストへ追加する」という話では済みません。今回追加された外国関連の事例を見れば、その難しさが分かります。

問題のある人物そのものではなく、その人物と関連する会社だったらどうでしょうか。契約者には何も問題がなくても、その株主やUBOが制裁対象者だったら。海外の関連会社を何社も経由していたら。異なる言語や別名で登録されていたら。昨日までは何も公表されていなかった人物が、今日になって海外当局から制裁や法執行の対象として公表されたら。

ここまで確認しようとすると、必要なのは単純な「反社リストのイエス/ノー」ではありません。世界各国の確かな情報へアクセスできる企業情報網そのものが必要になります。

 

6.もしPrince Group関連先が取引相手だったら

この問題を考える上で、非常に分かりやすい実例があります。過去の記事でも報じておりますが、カンボジアを拠点とするPrince Groupです。

2025年10月、OFAC(Office of Foreign Assets Control:米国財務省外国資産管理局)はPrince Groupを「TCO(Transnational Criminal Organization:国際犯罪組織)」として指定し、そのネットワーク内の146の対象に制裁措置を講じました。

ここで重要なのは、その外見です。米財務省によれば、Prince Groupはエンターテインメント、金融、不動産などに投資する多国籍企業グループとして活動していました。ネットワークには、Prince Holding Group、Prince Bank、Prince Huan Yu Real Estate Cambodia Groupなど、一見すれば通常の銀行や不動産会社として見える企業も含まれていました。

さらに米財務省は、100社を超えるシェルカンパニーや持株会社のネットワークを通じて犯罪収益を移転していたと説明しています。2026年6月には、OFACがさらに9人と26法人をPrince Group関連として指定しました。この措置について、米財務省は日本の警察庁とも緊密に連携したと公表しています。

ここで、一つ考えてみてください。もしPrince Groupそのものではなく、その関連会社が取引相手として現れたら、現在の自社のチェックで気付くことができるでしょうか?さらに、その会社自体には問題情報がなく、取締役や株主、その先の支配者にリスク情報が存在していた場合はどうでしょうか?

この場合には、日本語のニュース記事を一度検索するだけでは対応が難しく、重要な情報を取りこぼすリスクがあります。そして今回追加された27番の「関連する可能性がある契約者」という言葉を考えると、この問題は決して遠い海外だけの話とは言えません。

 

7.私たちは何を備えるべきなのか

事業者は捜査機関ではありません。そのため、すべての取引先について、世界中の犯罪組織との関係を自力で調査し尽くすことも現実的ではありません。しかし、「実効性」を求められる昨今において、当局側が“自主的な対応”を求める水準は高まっています。

そこで重要なのは、「KYC(Know Your Customer:顧客を知るための確認)」のプロセスを、「名前を検索してヒットしなければ終わり」から一段進める仕組みづくりだと考えます。実務上は、次の4点から現在の仕組みを見直すことができます。

① 何を情報源としているかを再確認する。

国内の反社情報だけなのか。それとも、海外の制裁情報、法執行機関・金融規制当局の最新情報、PEPs、ネガティブニュースまで確認できるのか。まずは、自社が現在どこまでの情報を確認できているのかを整理する必要があります。

② 会社名だけで終わらせない。

必要に応じて、代表者、取締役、株主、親会社、グループ会社、UBO(実質的支配者)など、その会社の背景や関係者まで確認できる状態を作ります。目の前の法人だけを確認していては、その先に存在するリスクを把握できない場合があります。

③ 「該当したか」だけでなく、取引の合理性を見る。

会社の事業内容、規模、設立時期、資産状況と、今回の取引金額、取引目的、資金源、関係国を照らし合わせます。PEPだから危険、設立直後だから危険という単純な判断ではなく、複数の情報を組み合わせて取引全体を見ることが重要です。

④ 安定して稼働し続ける体制か。

制裁指定や行政処分、犯罪関連情報は、取引を開始した後に公表されることがあります。そのため、取引開始時に一度確認して終わるのではなく、その後の変化を把握できるモニタリングシステムも有効です。

また、当局から提出を求められた際に速やかに対応できるよう、審査の記録を残しておくことも重要です。誰が、いつ、何を確認し、どのように判断したのか。その履歴を適切に保全し、従業員が容易に改ざんできない仕組みにすることも、安定した運用につながるでしょう。

求められるのは、犯罪者を「完璧に見抜く」ことではありません。合理的に確認できる情報を見える状態にし、通常とは違う「違和感」に気付き、必要な対応や報告につなげられる仕組みを作ることが大切です。その積み重ねが、社会全体のAMLの実効性につながります。

 

8.これは不動産業界だけの話ではない

今回、具体的な動きが見えやすいのは不動産分野でした。しかし、ここで「不動産会社の問題」として終わらせてしまうべきではないでしょう。

DNFBPsがまとめて国際的なAMLの枠組みに置かれている理由を、もう一度思い出してみてください。犯罪収益は、不動産だけに姿を変えるわけではありません。宝石や貴金属へ移転することもできます。法人や財産管理の仕組みを使うこともできます。専門家の社会的信用を利用し、正当な取引のような外見を作ることもできます。郵便物受取サービスや電話転送サービスなどが、犯罪のインフラとして利用されることもあります。警察庁の資料は、まさにこうした複数のDNFBPsについて実際の悪用事例を示しています。

扱う商品やサービスは違っても、共通する問いがあります。「自分たちの商品やサービスは、犯罪で得た富を移転し、別の形に変え、保有し、正当なものに見せるために、どのように悪用され得るだろうか」という問いです。

もちろん、「不動産向けの44項目を、宝石商や士業がそのまま使えばよい」という意味ではありません。しかし、不動産分野で具体化され始めた「何を見るのか」「どこに違和感を持つのか」という考え方は、他のDNFBPsにとっても学ぶべき点が多いはずです。

一つの業態だけ対策が強くなれば、犯罪者はより監視の弱い場所を探します。犯罪者側もAIなどの新しい技術を利用しながら抜け道を探し、手口を高度化させていく可能性があります。金融機関だけで完結しない。不動産だけでも完結しない。つまりAMLは、犯罪収益が通過する経済活動全体で考えなければならない問題なのです。

 

9.クレディセイフとしてできること

今回の参考事例を、企業情報会社であるクレディセイフの視点から読むと、興味深いことがあります。

  • その会社はいつ設立されたのか。
  • 何をしている会社なのか。
  • どの程度の規模なのか。
  • 誰が取締役なのか。
  • 誰が株主なのか。
  • 別名がないか。
  • どのような企業グループに属しているのか。

このような「疑わしいかどうか」を判断するために必要な情報の多くは、もともと企業信用調査レポートで確認してきた分野と重なっています。クレディセイフの企業情報レポートでは、会社概要、財務情報、株主、取締役、グループ系列など、企業の実態を把握するための情報を確認することができます。

世界有数の金融ハブをもつ英国では、AML/CFT/CPF(マネー・ローンダリング対策、テロ資金供与対策、拡散金融対策)について厳格な法制度・監督体制が整備されています。また、英国だけではなく、欧州や米国でもそれぞれ厳格なルールが設けられています。クレディセイフは英国に本社を置き、欧州や北米をはじめとする各地に拠点を展開しており、企業情報システムもこうした事業環境の中で提供されてきました。

英国には、主要な金融業界団体で構成されるJMLSG(Joint Money Laundering Steering Group)という組織があり、AML/CFTに関する実務ガイダンスを策定しています。同ガイダンスは英国財務省の承認を受け、英国の金融機関や規制対応の実務において広く参照されています。

クレディセイフが提供するコンプライアンスチェックシステム「KYC Protect」は、JMLSGガイダンスで示される基準を満たすAMLチェック機能を提供しています。企業・人物・団体について、グローバルおよび国内の制裁情報、AML/CFT/CPFの観点から確認すべき情報、PEPs、政府出資企業情報、不芳メディア情報など、複数のデータベースを横断して確認できます。

また、KYC Protectでは、一般的なWeb検索だけでは見つけにくい情報や、複数の専門的な情報源に分散している情報、現在は検索対象外となった情報も拾える可能性があります。企業や人物を登録して審査を行った記録を保全し、その後コンプライアンス情報に変化があった場合に通知するモニタリングにも対応しています。

クレディセイフの企業情報とKYC Protectを組み合わせる場合、考え方はシンプルです。

  1. まず企業情報レポートから「この会社の通常の姿」を知る。
  2. そのうえで、KYC Protectから得られる「国内外のコンプライアンス情報」と照らし合わせる。

当然のことながら、「これさえあれば、すべての犯罪組織を自動的に見抜くことができる」という意味ではありません。むしろ、そのような訴求はこの分野では許されるものではありません。最終的に取引をどう判断するかは、取引の事情や顧客から得た情報を含め、事業者様自身が判断する必要があります。

しかし、判断するために必要な情報が、そもそも見えていなかったという状態を減らすことには貢献できます。今回の外国関連事例を見ると、手前味噌ながら、その意味はこれまで以上に大きくなっているのではないでしょうか。

終わりに:「反社チェック」から「ビジネスインテリジェンス」の時代へ

日本では長年、「反社チェック」という言葉が広く使われてきました。それ自体は大切な取り組みですし、今後も必要です。しかし、これから問うべきことは、「反社」だけをチェックすれば足りるのか、という点です。

警察庁は、DNFBPsにはまだ多数の疑わしい取引情報が潜在している可能性を指摘しています。国土交通省は、不動産取引について「何を疑わしいと見るのか」をより具体化しようとしており、海外の関連先、高リスクな国・地域、外国PEPs、資金源、海外への資金移動なども確認すべきポイントとして示しています。さらに金融庁は、マネー・ローンダリング対策(AML)をテロ資金供与対策(CFT)に加えて、拡散金融対策(CPF)の重要性も示しています。

ここから見えてくるのは、単なる規制項目の追加ではありません。日本のAMLが、「制度を持っているか」から「実際に機能しているか」へと進みつつある姿です。

事業者には、受動的なチェックにとどまらず、取引先、関係者、資金の流れ、海外関連先まで含めて能動的に情報を収集し、リスクを評価する力が求められています。それは審査部門だけの役割ではありません。他の部門も含め、自社の業界でどのようなリスクが存在し、どのような手口が使われているのかという知見を蓄積していくことも重要です。そして、これからは「チェックをしているか」だけではなく、「そのチェックは、どの国の、どの情報源を使い、どの範囲の企業・人物・関係先まで見ているのか」という問いも必要になってくるでしょう。

今回、その変化が具体的に見え始めた一つの分野が不動産でした。では、ほかのDNFBPsはどう動いていくのでしょうか。そして、貴社の対策はいかがでしょうか。

不動産業界で始まった具体化を他人事として眺めるのではなく、自らの業務に置き換えて考える。それこそが、これからのAML時代に求められる「実効性」の第一歩なのかもしれません。

※本稿執筆時点(2026年10月初頭)で、国土交通省の44項目は「参考事例(案)」です。同省は関係機関との調整や例示の追記を行い、2026年10月を目途に改訂版を通知・施行する予定としています。最新情報であるため、今後内容が変更される可能性があります。

クレディセイフでは、与信管理から企業のモニタリング・コンプライアンスチェック・マーケティングリスト作成まで、これ1つで可能です。

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