ドイツ進出で知っておきたい商習慣・経済情報

ドイツは、長年にわたってマイスター制度(師弟制度)を取り入れ、技術継承を重視してきた国です。日本と同じく、職人の技術を大切にしながら、世界有数の工業国として発展してきました。

また、ドイツはEU最大の経済大国であり、フランクフルトには欧州中央銀行(European Central Bank, ECB)が本拠地を構え、欧州の金融の中心地としての役割を担っています。

本記事では、ドイツに進出を検討している企業や、ドイツ企業と取引をする方々向けに、経済情報や商習慣を詳しく解説します。

Chapter 1

基礎から学ぶドイツの経済情報

ドイツの基礎情報

公用語:ドイツ語
首都:ベルリン(人口 369万人、2024年12月)
人口:8,475万人(2024年9月)※EU加盟国の中で最大の人口
国土面積:約35.7万km²(日本とほぼ同じ)
GDP(名目):4兆6,585億 USドル(日本は4兆262億 USドル 2024年)※EUトップ
1人あたりGDP(名目):5万4,990 USドル(2025年、日本は3万2,498 USドル)
通貨:ユーロ (€) (EUR)
宗教:カトリック、プロテスタント、イスラム教、ユダヤ教
レポート保有件数:1,189万件
主要産業:自動車、機械、化学・製薬、電子、食品、建設、光学、医療技術、環境技術、精密機械、再生可能エネルギー等
祝日:9日 ※ベルリンにおける祝祭日。ドイツでは州により祝祭日が異なる。
民族:ゲルマン系を主体とするドイツ民族

ドイツの自動車産業

フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、メルセデス・ベンツ、BMWといったブランドは、一度は耳にしたことがあると思います。これらはすべてドイツの自動車メーカーです。

ドイツも日本と同じく、自動車産業が非常に盛んで、国内労働者の約7人に1人が自動車産業に従事していると言われています(日本は約10人に1人)。

また、ドイツの輸出においては、全輸出品目の約47%が機械および輸送用機器であり、日本への輸出でもこれらの品目がトップとなっています。

Chapter 1

忖度できないドイツ人、日本と異なる仕事に対する考え方

日本人とドイツ人は、勤勉でルールや規則を守る点がよく似ているといわれています。

一見、日本の常識がそのまま通じると思われるかも知れませんが、両者の考え方には明確な違いがあるため、注意が必要です。

たとえば、ドイツでいう「勤勉さ」とは、就業時間内にきっちり働くことを意味しており、残業はほとんどしません。

自己の権利ははっきり主張し、たとえ同僚の仕事が遅れていても、会社の就業規則にでも明示されていない限り、手伝う義務はないと言い切ります。

もちろん、体調が悪いときに無理をして出社することもありません。

効率的な仕事の仕方を好み、日本のように「1から10まで回答を用意しておく」、「要求されていないことを先回りしてやっておく」といった手厚いサポートや過剰サービスは無駄だと考えられています。

また、ルールを守ることが最重要のため、状況に応じて忖度するといったことは望めないといっていいでしょう。

融通が利かないように見えますが、言い換えれば、無駄を省き生産性の高い仕事をする優秀な人材が多いと考えられます。

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ルールを守る国民性とは裏腹!?決算書の提出率は意外にも高くない

ドイツでは、有限会社(GmbH)と株式会社(AG)に決算書の開示義務がありますが、提出率はあまり高くありません。

また、売上高や総資産、従業員数などの企業規模に応じてB/Sのみ、B/SとP/L両方の提出が認められていますが、大企業は財務諸表を提出しているという認識でよいでしょう。

決算は12月期の企業が多く、上場企業の場合は決算期から約4~5ヶ月後、未上場企業の場合は決算期から約12ヶ月後に決算書が入手可能です。

クレディセイフでは、Government gazetteと呼ばれる政府発行の機関紙(日本でいう官報)を中心に様々な公的機関から情報を入手し、毎日データを更新しています。

Chapter 1

ドイツ企業の売上高トップ10(2024年)

トップ10のうち、自動車メーカーが3社と、自動車大国ドイツを象徴する企業がランクインしています。

なかでも、ボッシュは自動車部品メーカーとして世界トップのシェアを誇り、自国だけでなく世界中の自動車メーカーに自動車部品を提供しています。

また、6位のDeutsche Postは傘下にDHL Groupを保有しています。DHLは世界で圧倒的な知名度を誇り、国際取引に欠かせない企業として小口の荷物や船積み書類(InvoiceやB/L)を送るなどといった場面で、非常に重宝されています。

10. Deutsche Bank

売上高:710億ドル(約10兆6,500億円)
CEO:クリスティアン・ゼーヴィング
セクター:銀行
産業:銀行
本社:フランクフルト・アム・マイン
公式サイトhttps://www.db.com/
従業員数:8万9,753名

9. Munich Re

売上高:750億ドル(約11兆2,500億円)
CEO:ヨアヒム・ウェニング
セクター:保険
産業:保険
本社:ミュンヘン
公式サイトhttps://www.munichre.com
従業員数:4万1,389名

8. Siemens

売上高:835億ドル(約12兆5,250億円)
CEO:ローランド・ブッシュ
セクター:産業機械
産業:エレクトロニクス・産業機械
本社:ミュンヘン
公式サイトhttps://www.siemens.com
従業員数:31万2,000名

7. E.ON

売上高:915億ドル(約13兆3,500億円)
CEO:レオンハルト・ビルンバウム
セクター:エネルギー
産業:エネルギー
本社:エッセン
公式サイトhttps://www.eon.com
従業員数:7万6,566名

6. Deutsche Post

売上高:911億ドル(約13兆6,650億円)
CEO:トビアス・マイヤー
セクター:物流
産業:郵便・貨物配送
本社:ボン
公式サイトhttps://www.dpdhl.com
従業員数:57万3,100名

5. Deutsche Telekom

売上高:1,252億ドル(約18兆7,800億円)
CEO:ティモテウス・ヘットゲス
セクター:通信
産業:通信
本社:ボン
公式サイトhttps://www.telekom.com
従業員数:20万名

4. BMW Group

売上高:1,540億ドル(約23兆1,000億円)
CEO:オリバー・ツィプセ
セクター:自動車
産業:自動車
本社:ミュンヘン
公式サイトhttps://www.bmwgroup.com
従業員数:15万9,000名

3. Mercedes-Benz Group

売上高:1,575億ドル(約23兆6,250億円)
CEO:オラ・ケレニウス
セクター:自動車
産業:自動車
本社:シュトゥットガルト
公式サイトhttps://group.mercedes-benz.com/
従業員数:16万6,000名

2. Allianz

売上高:1,675億ドル(約25兆1,250億円)
CEO:オリバー・ベイト
セクター:保険・金融
産業:保険
本社:ミュンヘン
公式サイトhttps://www.allianz.com
従業員数:15万7,000名

1. Volkswagen Group

売上高:3,512億ドル(約52兆6,800億円)
CEO:オリバー・ブルーメ
セクター:自動車
産業:自動車
本社:ヴォルフスブルク
公式サイトhttps://www.volkswagenag.com
従業員数:68万4,000名